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THE MIRRORにて

THE MIRRORにて、作品は7月27日まで開催されていた「あなたの夢にシェターニは出てきますか〜ジョージ・リランガ from タンザニア〜」より

THE MIRROR様は、西早稲田にあるアートギャラリー。1979年に建築学会作品賞を受賞した建築界垂涎の貴重な建物「松川ボックス」の中に、世界各国のアーティストによる作品が鑑賞できる空間を創られ、人とアートの出会いをプロデュースしています。
代表を務めるのは、国内外で活躍されているアーティスティック・ディレクターにして美術評論家、そしてフランス芸術文化勲章シュヴァリエを受勲されている清水敏男様。パブリックアートの総合コンサルティングを行っているTOSHIO SHIMIZU ART OFFICEの代表です。
そのTHE MIRROR様からご依頼いただいたのは、ミュージアムグッズとなるTシャツ製作のご相談でした。そしてなんと岩手県一関市にある和興の工場までおいでくださり、それがきっかけとなって廃材生地を使ったTシャツを作ろうという展開になっていったのです。
サステナブルなものづくりとアートを両立させるこだわりを持ったTHE MIRRORの清水様と、和興に連絡をくださった酒田様にお話を伺いました。

出会いは、1本のメールから始まった。

対談の様子の画像

●まずはTHE MIRROR様と和興の出会いから。最初はTHE MIRRORの酒田様が、数あるWebサイトの中から和興を見つけてメールをくださいました。

THE MIRROR酒田様(以下酒田):はい。THE MIRRORのTシャツを作ろうという話が出て、それで探していたんですよ。ただ、Tシャツを作ると言っても、やはりオリジナルで作るとなると安価なプリントにするのか、こだわるのか、既存のブランドにお願いするのかなどで幅がありますよね。そしてそんなに枚数を作るという感じでもなかったので、いろいろ悩みつつ探していた時にたどり着いたのが和興さんのサイトでした。岩手に工場があるということもそこで知って、私は青森出身なので「いいなあ」と思ってメールをさせていただきました(笑)。あと、和興さんはブランド立ち上げやスタートアップのアプローチもされていたので、「ここだったら多分、右も左も分からない私たちのお話も聞いていただけるかな?」と思ってご連絡させていただきました。

和興國分社長(以下國分):去年の12 月12日にメールをいただいて、すごく嬉しくなってしまって、12月21日に会いに行ってしまいました(笑)。

●國分社長が嬉しく思う、何か特別な理由があった。

國分:はい。実は私はもともとインテリアの仕事をしていたことがあり、建築やデザインに関してとても大きな興味があったんですよ。いつかこういう、「アパレルとアート」とか「アパレルとインテリア」といったかけ合わせができないかなと、いつかデザイン業界の方とコラボレーションができないかなと、ずっと思っていたんです。しかもTHE MIRROR様は建築界隈でかなり有名な「松川ボックス」でギャラリーをされているということで、そういうことも含めて、ぜひご一緒したい、お手伝いしたいなという思いがありました。

酒田:そうして最初にお会いした時は、まずは私がお話を聞いて。Tシャツを作る場合はどういう手順が必要かといったベーシックなお話から、和興さんはどういう会社なのかというお話をいろいろ丁寧に伺いました。それを清水に伝えて、翌2024年1月の年明けすぐにまたこちらに来ていただき、清水も交えてお話をさせていただきました。

●年末から年明けにかけてという時期にあって、かなりテンポよく打合せをされたのですね。その時、何か特に印象深かったことなどはありますか?

國分:ギャラリーにたくさんの方がいらしてくれて、そこで何か持って帰っていただけるようなもの、たとえばTシャツやトートバッグといったアイテムの開発をされたいというお話があって、その中でウチでできることをお伝えしました。地球環境に優しい和紙素材、清水さんが取り組んでいる活動に親和性がある素材などのご提案もさせていただいたんですが、THE MIRRORはギャラリーであって洋服を買いに来る場所ではないので、1万円超えるような商材はなかなか厳しい。そうした様々なことを話しながら、和興がしっかりものづくりの伴走を支援する会社なのかどうかを確認してくださっていたという印象があります。私たちが行っている事業について、大きな関心を持っていただけたことは嬉しかったですね。

THE MIRROR清水様(以下清水):東日本大震災の後に、岩手県福島県を中心とした保育園・幼稚園・小学校・中学校に桜を植えるということをやっていて、ずいぶんたくさんの桜を植えたんですね。そういうこともあって、和興さんは工場が東北にある。そして環境問題に関心がある企業であるとお伺いしたので、ぜひお会いしたいなと思ったんですよ。アートをやっていると、環境問題に非常に関心が強くなるんです。なぜかというと、たとえば美術館では大量のごみが出る。展覧会ごとにケースなどを作るんですが、終わったらそれを全部捨てるんです。「これはまずいな」とずいぶん前から思っていて、すごく考えるようになっていたんですよね。そんな中、和紙で作った生地素材のお話を伺って興味を持ちましたし、一番大きな決め手は「廃棄されているテキスタイルをなんとか再生させる術はないか考えて欲しい」という話でした。

「廃棄されるテキスタイルを見たい!」と、すぐさま工場を見に行った

対談の様子の画像

國分:ほんとうに廃棄はアパレル産業の課題なんですよ。

清水:ええ、そうした記事も読んだことがあったので、実際に廃棄されるテキスタイルを見てみたいし、どういうところで作っているのかにも関心があって。あと私、ファッションデザイナーの三宅一生さんが好きなんですが、三宅さんと言えばBORO(ぼろ。東北の布をはぎ合わせる技法)への取り組みが印象的でしたし。そもそも東北の繊維産業の展覧会(「東北の底力、心と光」)を見ていたこともあり、「ぜひ岩手工場を見学したい、すぐ行きたい」というお話をさせて頂いて。

國分:そして翌2月に行きました。寒かったですね。

清水:寒かったです(笑)。テキスタイル工場を見るのは初めてでしたが、整然と仕事をしていましたね。他の工場はワーっと、自動車工場なんかだとゴンガンゴンとしているんですが、ここはミシンの音だけがする中で皆さん静かにキビキビと仕事をされていた。働いている方々が挨拶をしてくださるのも嬉しかったですね。そしてその時に実際廃棄されるものを見せていただいたんですが、びっくりしました。ほんとうに大量にあった。

國分:「ここからここまで、全部ゴミなんですよ」と説明させていただいて。まあ捨てられなくて物凄くため込んでいたというのもあるんですが。

清水:そしてそれらが、全く問題なく使えそうなものなんですよ。反物というか、ロール状なんです。

國分:理由があるんです。アパレル業界は今よくないので、たとえば最初は500枚の製品を作ろうとして生地を用意するんですが、それが途中で300枚になってしまったりする。そうすると200枚分の生地が残ってしまうんです。で、生地を支給して下さった会社に残りを戻しますと言うんですが「いやいや捨てておいて」と言われてしまう。でもいわゆる産廃なので、捨てるのにもお金が掛かる。それを私たちの費用で捨てなくてはならないというのが凄く納得がいかなくて。その結果、廃材の山になってしまった。

●清水様は実際にその廃材の山を見て、どんな感想を抱かれましたか。

清水:いやー、ほんとうに想像以上に量が多かったですね。業界の状況を知ることにも繋がりました。そしてだからこそ、これを使って何かが作れないかと思いました。

國分:どうやったらこれを無駄にしない、アップサイクルとかサーキュラーエコノミーとか最近よく聞きますが、私はもう8年前からずっと悩んでたんですね。「これはもうどうやったらいいのかな」と。だから、廃材で作ると言ってくださったのは嬉しかった。でも何といっても嬉しかったのは、そもそも工場は岩手の奥地にあるわけで、行くのには費用も時間もかかるんです。にもかかわらず足を運んでいただいた。物凄く感動しました。

そして商品開発第一弾は、カッコよく着心地のいいTHE MIRRORのTシャツ!

THE MIRRORのTシャツ

●そうした打合せや工場見学などを経て、THE MIRRORで作りたいものが固まっていった。

清水:工場で見た複数種類の廃材生地から選んで、それで見本を作ってもらおうという話になりました。

國分:プリントのサイズ感とかもかなりこだわりがあって、結構大変でしたね。

酒田:大きい方が今っぽいかなとか小さい方が着やすいかなとか、そういうところも難しいんですね。

清水:このTHE MIRRORというロゴをデザインしてくださったのが、浅葉克己さんという日本で最も有名なグラフィックデザイナーの方なんですよ。業界のトップマンだし、桑沢デザイン研究所の所長も務められた。

國分:そしてこのロゴの色味がまた難しいんですよ。パシッとした色ではなくて、ちょっとこう印影というかムラ感があるじゃないですか。あのカラーの表現が我々としては結構難しかったです。

清水:いやもう、「できたら持ってこい、持ってこい」と言っていた浅葉さんも、大変気に入ってましたよ(笑)。あと葉山でちょっとウルサ目のメディア関係の方々と会食した時に私も着ていったんですが、みんな凄くいいと言ってくださった。著名な写真家やメイクアップアーティスト、雑誌編集の方々が「おおー、いいね!」と言ってくださった。これからどんどん宣伝してくれるかもしれないから、配らないといけないかもしれない(笑)。そしてこのTシャツはここTHE MIRRORで販売予定ですが、秋からはWebでもきちんと販売する予定です。

●おおー!

清水:あとね、実はアーティストの方に、THE MIRRORでの展覧会用にTシャツを作りませんかと聞いてみたことがあったんですが、その時はダメですと断られたんです。でも、このTシャツを見て「許可すればよかったですね」と言ってくださった。

國分:ええー!

清水:だから今後は、そうしたアーティストのグッズも作れるかもしれませんね(笑)。

●はははは。ちなみにTシャツ以外のグッズも考えていますか。

國分:アーティストさんが定期的に入れ替わっていくギャラリーなので、そういう方とのコラボアイテム ができるととてもいいのかなとは思っていますね!エコバックとか。

清水:エコバックは逆に今エコじゃなくなってるからね(笑)。しっかりした布でのトートバッグがいいですね。

國分:なるほど。出張先にちょっと入れられるポーチとかもいいですね。

日本で、ものの価値が伝わるものづくりをしていこう

清水:やはりね、ブランドで買うとかじゃなくて、品質がいいから選ばれるというものを作って行きたいですね。実際このTシャツ、着たらすごく気持ちいいんですよ。驚くほどしなやかなんです。生地もいいし、それを活かす縫製がまたいい。こうした価値あるものをアピールしていきたいですね。

國分:そうですね。あと、地産地消というか国内で作ったものを国内で消費するということにも重きを置きたいです。アパレルは賃金が安いところにどんどんどんどん流れていく産業なんですよ。だから80年代から海外工場が主流になっていきましたが、中国などを経て、今はバングラデシュなどの工場で作られている。でも、それを輸送する燃料などを考えると、地球環境的には物凄く無駄なことをしていると思うんです。だから、日本で着るもの、日本で売られるものは日本で作って行くべきだと思うし、そういう考え方が今後どんどん進んで行くんじゃないかと思っています。そして、私たちのものづくりと融合したアートがあるとすごくいい。着て使って気持ちいいし、心も気持ちいい。そういうものづくりをしていきたいです。

酒田:ええ。THE MIRRORのコンセプトとして、クリエイティブミュージアムという、アートだけではなくてデザインとか建築、サイエンスであったりとか、そういったものを繋げていこうというテーマがあるんですが、それと今回のプロジェクトはテーマにすごく合っていたなと。今後そういう掛け合わせるコンテンツになっていけばいいなあと思っています。

國分:いいですね!実は今の日本のセレクトショップってものすごく同質化しているんです。どのお店、どのブランドに行っても、同じような商品が並んでいる。たぶん、バイヤーさんの目利きが落ちていて「あそこで見たあれがよかったよ」「じゃあうちも出そう」みたいな流れになっている。逆に先ほどお名前が出た三宅一生さんはとことん自分で考えて自分オリジナルのものを生み出されていますが、そういったブランドは本当に少なくなっているという実感があるんです。でも、THE MIRRORに行けば、セレクトショップにはないようなものが、色々かけ合わせた普通の世の中にないようなものが並んでいる。そうなったら素敵だなと、面白いなと思うんですよ。

清水:まあ、まだこれが最初のチャレンジなのでいきなりいろいろはできませんが、希望としては面白いことをしていきたいですね。でもまずはこのTシャツ、廃材を使って丁寧な縫製をしていただいたこの流れを大事に、オリジナルなものを作っていきたいと思っています。

活動情報

THE MIRRORでは、2024年9月11日~10月5日まで【ラム・カツィール個展『がんばって』Ganbatte, a solo exhibition by Ram Katzir】を開催します。
そのほか、THE MIRRORの最新情報は、下記からどうぞ。

THE MIRROR オフィシャルHP
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-14-15 松川ボックス A棟

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