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2024年を振り返ると、私にとっても和興にとっても本当に濃い一年でした。
これまで描いてきたビジョンが具体的な形になり、多くの成果として実を結んだ一年でもあります。
ここでは、私たち和興の3つのビジョンについて、その歩みと成果、そしてこれからの展望をお話ししたいと思います。

【アート&クリエイティブ】和興の2024年は「パンティーからカレーを作る」という驚愕の依頼からスタート!

◆ORANGE RANGE様からのご依頼

2024年の始まりはロックバンド、ORANGE RANGE様からのご依頼で、ライブ会場で曲に合わせてお客様がぶんぶんと振り回すためのパンティーを、WASHI-TECHで製作させていただきました。バズーカで会場いっぱいに飛び出し宙を舞うパンティーという壮大な光景を見せていただき、感激しました。
しかもライブで使用済みのパンティーは、ある目的を持って回収されました。
WASHI-TECHは最終的に土壌に還る素材であり、優秀な肥料にもなります。ORANGE RANGE様はライブで使用後のパンティーを集めて畑に埋め、野菜を育て、それでカレーを作るという壮大な計画を描いておいででした。マネージャーの副島さんを通じてORANGE RANGEのYAMATO様と打ち合わせを重ね、商品を作っていく過程は、すごく面白く、クリエイティブで、「仕事って楽しいな!」と実感したプロジェクトの一つでした。そしてパンティーから作られる野菜は、来年の春に収穫予定。 2025年のジャーナルでまた続報をお届けしていく予定です。

◆くぅちゃん様からのご依頼

次は、デジタル・クリエイター、くぅちゃん様とのお仕事。インスタライブで次々と商品が売れていく様子を見るというはじめての経験でした。作り手として、リアルタイムで売れる瞬間に立ち会えたことは感動でした。
最初はWASHI-TECHでの商品作りから始まりましたが、今年は廃材生地を使ったアップサイクルプロジェクトにも挑戦しました。和興の岩手工場に足を運び、工場の奥に積まれた使われない生地に光をあててくださった。くぅちゃん様のプロジェクトはWASHI-TECHや廃材生地といったサステナブルな取り組みを重視しつつ、しっかりマネタイズも考えられた大きなお仕事になっています。とても感謝しています。

◆ポーラ美術館様からのご依頼
ポーラ美術館

箱根のポーラ美術館様は今年、何度もリピート生産させていただきました。ちょうど昨日(12月11日現在)も新たな生産分を納品させていただいたところです。特に嬉しいのは、その商品が、ポーラ様所蔵の絵画をモチーフとしたオリジナル商品であること。アートとアパレルのクロスオーバーは、和興が是非挑戦したかった分野です。モネの睡蓮をイメージしたTシャツから始まり、今年はルノワールのアネモネをイメージした新作も製作させていただきました。有名絵画のエッセンスを取り入れたものづくりは、格別な感動があります。
本来アパレルはアートにもっと近づくべき存在だと思いますが、製造業にはなかなかそういう機会がありません。そんな中、ポーラ様との取り組みの中で、表現することの楽しさや、美術館に来館される世界中の方々に手に取ってもらえる喜びなど、本当にいろいろなことを教えていただきました。学び、楽しみ、やりがいのある、実り多い案件でした。

◆THE MIRROR様からのご依頼

国内外で活躍されているアーティスティック・ディレクターにして美術評論家、清水敏男様のご依頼で、高田馬場のアートギャラリー「THE MIRROR」のオリジナルTシャツを製作したことも、とても実りあるお仕事になりました。
清水様は東京都庭園美術館のキュレーターでもありますが、自身が手掛けるギャラリーで「意味のあるものを作りたい」とご連絡をくださいました。
清水様も岩手の工場までお越しいただいて廃材生地をご覧になりました。展覧会などでも多々あるという廃棄問題に心を痛めていたこともあって、「この廃材を使ってTシャツを作りたい」と言ってくださり、廃材を使って一流のもの作りをするという取り組みが生まれました。
「THE MIRROR」のロゴは、日本を代表するグラフィックデザイナー・浅葉克己さんのデザインです。そのムラ感ある表現を活かすのが難しく、とても学びとやりがいのある仕事になりました。完成品に喜んでいただき、清水様自身「着心地がとてもいい」と愛用してくださっていることをとても嬉しく思っています。「次は何を作りましょう」といろいろご相談させていただいているところです。

◆HALS様からのご依頼
対談

今年最後にジャーナルでご紹介させていただいたのがクリエイティブプロダクション、HALS様。ブランディング・パッケージデザイン・キャラクター開発・VMDコンサルティングなどのトータルマネージメントをされているHALS様からのご依頼は、ギネスビールとスミノフのキャンペーン用プレミアムアイテムの製作。ハイブランドの製品と見紛うようなアイテムを、国内の素晴らしい技術に特化したパートナー企業とタッグを組んで作り上げました。とても面白いお仕事であったことはもちろん、和興が持っているHUB WAKOH(※下記参照)という構想にも結実したことは、まさに大きな喜びでした。
現在は新たにスミノフのフードパーカーを製作中で、完成は年明け予定です。
HALS様の代表であるジョー オガワ様が「また一緒にものづくりをしましょう」と言ってくださり、有難い限りです。おこがましいかもしれませんが、仲間というか、パートナーというか、そんな関係になれたのがとても大きな成果だと思っています。

※HUB WAKOHとは?
まさに職人技といえる刺繍技術を持つ会社や、生地の縮みなども計算しながら狙った色を作り出し染め上げる染色加工の会社、さまざまな生地に再現性の高いプリントを施す印刷会社など、日本にはアパレルに関わる様々な企業があります。そうした企業と共に手を取り合い、和興は一流のものづくりに挑んでいます。

【海外進出】国内縫製工場の未来への挑戦

数々のやりがいあるお仕事をいただき、ベストを尽くしてきた2024年。和興にとって今年は海外進出を本格的に始める年となりました。
きっかけは昨年2023年のバンコクでの展示会。そこでの出会いを改めて形にしていこうと動き始めたのが、今年6月のバンコクへの再訪になります。11月にはさらなる新たな出会いを求め、バンコクで展示会に参加いたしました。興味深かったのは、再訪を重ねるたびに「和興さん、また来てるんだね」という方々が増えてきたことです。何度も出向いたことで、安心感というか信用というか、「本気でバンコクで商売をする気だね」と認識されてきたのだと思います。そうなってくると、商談もより話が具体的になっていくんです。
海外進出の先輩であるAnything(エニシング)の西村さんから、「成果が生まれる生まれないに関わらず、3年は続けないとダメだよ。3年目ぐらいから具体的な話になっていくからね」 と教えていただきましたが、今回その言葉を実感しました。自ら現地に足を運ぶことが重要なんだと。

日本国内の生産現場を守るために、海外進出は必要なアクションだと思っています。国内マーケットだけを見ていたら、成長する機会を逃してしまうかもしれない。海外への挑戦は日本のアパレル製造業にとって避けては通れない道であり、和興はスタートが遅かったぐらいだとも思っています。それでも少しずつ成果が出てきているんだということを伝えていくことで「國分にできるんだったら、俺にもできるぞ!」と思ってもらいたい。だから率先してお伝えしていきたいのです。

◆バンコクでの商談状況

現在、バンコクのアーティストブランドなどからボーリングシャツとクラシックポロの発注を頂いています。展示会で出会った方への生地やサンプルの提供も進行中です。また、今回の訪タイで、量産に進んだミーティングも持つことができました。
和興は現在、地理的に近く、現地の人々の体形も日本人と近いASEANでの活動を主軸に据え、バンコクや台湾を中心に赴いています。ただ、最近欧米からのお問合せも増えてきたため、そちらへの対応も考えていかなくてはならない。もともとはそこを目指していたため、嬉しい悲鳴というところです。

◆和興が開発したWASHI-TECHに関して

WASHI-TECHでの取り組みも数多くありました。サステナブル素材ということもあり、海外からのお問合せも多数あります。先月(2024年11月)は、台湾のMUJI様(無印良品微風松高旗艦店の1階催事会場)にて開催されたポップアップストアで、WASHI-TECHのTシャツ・ストール・ハンカチを販売させていただきました。台湾では、日本の商品やカルチャーに興味を持っていらっしゃる方が本当に多く、WASHI-TECHが持つ機能性や、和紙という日本の文化を踏まえた商品にとても好意的な反応を示していただき、感激しました。
ただWASHI-TECHに関しては現在のところ、日本国内での評価も高い。例えば大きなアパレルブランド様から「WASHI-TECHの製品作りで、ぜひご一緒したい」というお話をいただいています。それは非常に大きな成果だったなと感じています。
また、WASHI-TECHでは、業務委託契約もできました。製造業としては今まで考えられなかった、自分たちが育ててきたものを委託契約という形でクライアントと繋がれたことは、すごく大きいことだったなと感じます。

【継承】日本のアパレルの未来を担う若者たちに向けて

冒頭で、和興のビジョンは3つあると申しました。1つ目は、国内でのアートをはじめとした異業種とのコラボレーション。2つ目は、海外へ向けた日本の技術力の提示と、それを正当な価格評価のもとで仕事に繋げる活動。そして最後の一つが一番難しいかもしれない、アパレルの未来を切り開く若者への継承です。

今年は大学などで講演する機会が、数回ありました。日本におけるアパレル製造業の現状を知ってもらい、そしてそこから、アパレルの新たな未来を描き出してほしいと思っています。
ちょっと余談になりますが、若者たちを見ていて思うことは、若者って根拠のない自信とかを持っていたりしますよね。勇気や行動力って、実はそういうところから生まれて来たりする。そこにとんでもないエネルギーの発露があったりすると思うんです。
私自身、実は「これ本当に大丈夫かな、これで合ってんのかな」とか反芻(はんすう)するタイプなんですが、そういうのってあんまりエネルギーが生まれない。
エネルギーって結局、行動の連続のような気がします。 止まっちゃったら動けなくなっていく。だからもう次々動いていくしかない(笑)。そして動いていけばエネルギーが生まれ、新しい人に出会い、またエネルギーもらって悩みながらも走ることができるーー今年はそんな感覚をすごく実感できる年でもありました。

まとめに代えて

2024年は非常に濃密で、様々なことの起点になった1年でもありました。「異業種コラボレーション」「海外進出」「若者への継承」といった和興が目指してきたことが成果となって現れてきたわけですが、まだまだやるべきこと、やりたいことがたくさん待っています。
2025年は、2024年にまいた種が芽吹くよう、国内外で戦略的に動いていきたいと思っています。
今後とも、どうぞ和興をよろしくお願いいたします。

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